スティーブン・キング原作の新作である。キングといえば現代アメリカを代表する世界的ベストセラー作家で、1974年の『キャリー』でデビュー以来、『シャイニング』『IT/イット』など「モダン・ホラーの帝王」として数々の傑作を輩出。4億冊以上の売上を記録し、ホラー、サスペンス、ヒューマンドラマまで幅広い名作を生み出している。
3章から始まる物語の冒頭、世界は終わりに向かっている。地震、津波、森林火災——次々と襲いくる災害の中、街に謎の広告が現れる。「ありがとう、チャック」。誰も知らない男への、突然の感謝。
なんだこれは? てっきり地球規模のパニック映画かと思っていた。ところがこの映画は、静かに反転する。2章から1章とカウントダウンしながら、チャックの青春期が描かれ、物語は謎を解いていく。
「世界の終わり」は実は、ひとりの人間の人生の終わりだったのだ。チャックという普通の男の39年間の思い出——その小宇宙が、滅びゆく地球と等価なのだと気付かされる。
これは誰にでも確実に訪れる普遍的なことだ。そして、胸に刺さるのは、「できた夢」ではなく「できなかった夢」が描かれているところだ。誰の人生にもある、気づかないまま手放してしまったもの。この映画はそれを、責めるでも慰めるでもなく、ただ静かに差し出してくる。その切なさに、不意をつかれる。
登場人物たちも、一見無関係に見えて、実は細い糸で繋がっている。人生とはそういうものだ、と映画はさりげなく語る。マーク・ハミルの老いた姿がスクリーンに現れた瞬間、その「歳月」はフィクションを超えて観客自身の時間と重なったのだ。
80歳になろうとしている作家が、まだまだこれほどの創造性を持ち続けていることに驚愕した。
「面白かった!」と即答できない。でもそれがこの映画の深さの証明だと思う。キング原作の人間ドラマ系譜の中でも、忘れがたい一本になった。


































