第46回オンライン・トークライブ「未来への贈り物 ~Present to the Future~」
出演:五味弘文さん(株式会社オフィスバーン代表取締役・お化け屋敷プロデューサー)
司会:関 智(編集者、プロデューサー)
ホスト:ブルース・オズボーン(写真家)、井上佳子(親子の日普及推進委員会)
主催:親子の日普及推進委員会
配信日時:2026年5月23日(土)12:30~(LIVE配信)
第46回目のオンライン・トークライブのゲストは、五味弘文さんです。
本記事では、動画のハイライトをご紹介します。
<動画はこちら>
出演:
五味弘文(株式会社オフィスバーン代表取締役・お化け屋敷プロデューサー)
1992年、後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティ アトラクションズ)『麿赤児のパノラマ怪奇館』を皮切りに、30年以上にわたり100本 を超えるお化け屋敷を制作。”ストーリー”と“ミッション” を取り入れた独自の演出で、お化け屋敷を大人も楽しめるエンターテインメントへと進化させた。代表作に『赤ん坊地獄』『足刈りの家』『ゆびきりの家』など。著書多数。
関 智(編集者、プロデューサー)
「POPEYE」「BRUTUS」「宝島」など、カルチャー雑誌の企画・編集に参加。現在は、日本工学院などの非常勤講師、刺激スイッチ研究所所長も務める。「親子の日」公式サイトの「せきさとるのムービー親子丼」を担当。
ブルース・オズボーン(写真家「親子の日」オリジネーター)
1982年から親子をテーマに写真撮影を開始。2003年より7月の第4日曜日を「親子の日」と提唱。「親子の日」などの写真を通じての社会活動が認められ東久邇宮文化褒賞を受賞。作家として「未来への贈り物〜Present to the Future〜」というメッセージの発信を続けている。
井上佳子(親子の日代表 プロデューサー、株式会社オゾン代表取締役)
ブルース・オズボーンの仕事とプライベートのパートナーとして数多くの展覧会やイベントをプロデュース。
五味さんご紹介
関:こんにちは。本日はおっかないゲストをお招きしました。お化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんです。五味さんはブルースと非常に縁が深く、五味さんがプロデュースされている、後楽園のお化け屋敷の写真を毎年ブルースが撮っています。まずはブルースとの出会いから伺いたいですけれども。
ブルース&佳子との出会い
五味:1992年から後楽園のお化け屋敷の仕事を始め、舞踏家の麿赤兒(まろ・あかじ)さんに演出を頼みました。その「麿赤児のパノラマ怪奇館」が大ヒットし、翌年も依頼が来て。麿さんの時の宣伝美術は絵師の丸尾末広さんだったんですが、丸尾さんの写真をブルースが撮っていたんです。
ブルース:そうだね。
五味:その関係で「大駱駝艦」のプロデューサーから「ブルースに頼んだら」と言われたのが最初の出会いでした。
関:アングラの感じで活動されていた頃ですね。
五味:「東京ガガガ」の頃ですからね。
佳子:楳図かずお さんはその後ですか?
五味:いや、その時です。翌年のお化け屋敷を楳図 さんに頼んだので。楳図 さんの写真も撮ってもらいました。
動画 4分52秒「ブルースとの出会い」
動画 4分58秒「撮影が始まる」
関:脳を食べてますね。レクター博士というか、ヤコペッティの「世界残酷物語」にも猿の脳を食べるシーンがありますね。
五味:こういうプランは「こんな写真を撮ったら面白いんじゃない」と話しながら、ブルースがスケッチを描いて進めていく感じです。
動画 5分56秒「大駱駝艦のダンサーたち」
ブルース:家族や知り合いも入っています。
五味:周りは「駱駝艦」のダンサーたちですね。
動画 6分28秒「『闇の心臓』」
五味:これは「闇の心臓」という、心臓を持って歩くお化け屋敷なんです。
関:いやですね(笑)。
五味:白塗りの人間が出てくるので怖いですよ。
お化け屋敷の体験とミッション要素
関:五味さんのお化け屋敷には、例えば「何かを届ける」といったミッションがあって、それが責任を負うから怖いんです。
五味:怖いから関わりたくないのに、届けなきゃいけないと気持ちが重くなるんですよね。
関:日本人は真面目だから、ミッションをやろうとするんですよ。
五味:結果的に楽しみを得られるから、やってくれるんです。
お化け屋敷を作って親戚を驚かせていた幼少期
関:五味さんは法学部から演劇に進まれたわけですが、ホラー好きは幼少期からですか。
五味:子どもの頃から怖いことが好きで、人を楽しませたい気持ちもありました。落語も好きで噺家になりたいと思いつつ、自分の家でお化け屋敷を作っていました。小学3〜5年の3年間、夏になると自宅にお化け屋敷を作り、長野に帰省してくる親戚を怖がらせていました。
関:「三つ子の魂百まで」ですね。
五味:人生のほとんどを、お化け屋敷やってるようなものですね。小学校3年、4年、5年からこの3年間、夏になると、お化け屋敷を自分の家に作って。
関:文化祭でもないのに。
五味:中学・高校・大学では、そのことはすっかり忘れていました。大人になってお化け屋敷を始めた頃には、子どもの頃やってたなんて記憶はもうなかったですね。
上京劇場との出会いと演劇への転身
五味:学校演劇は見るのが嫌だったんですが、大学で演劇サークルの友達が「騙されたと思って、面白いから見て。テントの中でやるんだよ」と言うんです。それで上京劇場を見に行って、衝撃を受けました。根津甚八さんや小林薫さんが出ていて、嫌いだった気持ちが一気に「面白い」へ反転しました。それから脚本を書き始め、友達の劇団に持ち込んだら好評でした。
五味:その頃はつかこうへいさんが出てきて、続いて野田秀樹さんや鴻上尚史さんなど六大学の学生劇団がブームになり、自分もそうなりたいと夢中になりました。
関:それで、立教の五味というわけですね。
初のお化け屋敷は、江戸川乱歩の世界観で
五味:上京劇場の役者の中心は麿さんだったので、すごい巡り合わせですよね。最初のお化け屋敷「麿赤兒のパノラマ怪奇館」は江戸川乱歩の世界です。
動画 17分11秒「『麿赤兒のパノラマ怪奇館』」
関:この写真もブルースが撮っていますよね。「親子の日」では、こんな写真見たことないですから、びっくりですよ。
佳子:今日初めて公開します。
怖いけれど、最後はみんな笑顔になる
関:ブルース、どんな気持ちで撮っていたの?
ブルース:すごいチームだよ。クリエイティブで、なかなかこの2人は一緒にならない。
動画 17分59秒「ブルースとの撮影」
動画 18分05秒「ライティングによる演出」
佳子:ブルースの親子写真はモノクロでシンプルだけど、こちらはライティングなど凝っていて楽しかったと思います。
動画 18分14秒「お化け屋敷の世界観」
動画 18分24秒「ストーリーを写真で表現する」
関:この人形、CGじゃないんですか?
五味:ある程度並べて撮ったものを重ねています。
佳子:五味さんのストーリーをもとにブルースがイメージを出し、それを加工する際の効果を考えながら撮影していきました。
動画 19分21秒「印象的な一枚」
動画 19分33秒「床下に埋められた女性」
動画 19分46秒「お化け屋敷のビジュアル表現」
関:これはいい写真ですね(笑)。
動画 20分16秒「印象的な一枚」
五味:この女性は、床下に埋められた人ですね。
動画 20分30秒「太秦のお化け屋敷」
ブルース:これはコロナの時かな、みんなマスクしてる。
五味:太秦のお化け屋敷かな。
動画 20分54秒「『首筋理髪店』」
五味:これは「首筋理髪店」といって、首筋を切ってしまう理髪店です。
関:いや、怖い。
五味:懐かしい写真がいろいろ出てきて、嬉しい。
関:五味さんにとって「怖い」とはどんなことですか。
五味:お化け屋敷は怖い場所だけれど、最終的には楽しいんですよ。「ギャー」と言った後、多くのお客さんは笑顔になるんですよ。怖がった自分や一緒にいる人を笑うことで客観的になれるのが面白いんですよね。
関:昔は遊園地に常設のお化け屋敷があり、二子玉川園やドリームランドにもあったのに今はなくなりました。ドリームランドの床がふにゃふにゃになるお化け屋敷はショックでした。
五味:原始的な脅かし方ですね。
ブルース:花屋敷はチープとファンキーがすごかった。最初浅草に住んでいたんです。
五味:あの頃の花屋敷はチープだったけれど、昔ながらの味わいがあって良かったですね。
関:縁日のお化け屋敷やヘビ女の見せ物小屋も懐かしいです。
五味:今も新宿の花園神社の酉の市で見せ物小屋が1つだけやっていて、素晴らしいですよ。お化け屋敷は一時絶滅危惧種になりかけましたが、今は定着しました。
関:鈴木光司さんの「リング」「らせん」がJホラーを復活させた面もありますね。
五味:「呪怨」の清水崇さんが出てきて流れができると、追従する監督や映画が出てきて、どんどん豊かになっていきますよね。
関:その一翼を五味さんも担っている。カルチャーの創造者ですね。
日本とアメリカのホラーの違い
佳子:日本と海外のホラーの、一番大きな違いは何ですか?
五味:アメリカは力の強さが怖さになる。ジェイソンのような殺人鬼ですね。日本の場合は、弱い者のほうが怖いんですよ。女の人がお化けになるじゃないですか。虐げられて、挙げ句に亡くなって。恨みが強い。その怨念が怖さになっていくわけだよね。だから、弱いほど怖いわけです。仇討ちと怪談も、男は仇を討てるけれども、女の人は化けて出るしかない。四谷怪談は仇討ちと怖い話の両方が結びついています。僕のお化け屋敷も女性がひどい目に遭う話が多いです。
動画 27分59秒「日本とアメリカのホラーの違い」
最も怖かった作品「悪魔のいけにえ」
関:五味さんが一番怖いと思った作品は?
五味:「悪魔のいけにえ」ですね。当時は情報が少なく都市伝説的な話もあり、映画館で正視できないほどの衝撃でした。
関:チェーンソーの音が怖かったですね。
五味:怖さ以外にも見えてくるものがあって面白い作品です。50周年でドキュメンタリーもできましたね、ホラーというくくりでなくても見ておくべき作品だと思います。
動画 29分50秒「『悪魔のいけにえ』」
ブルース:怖くて見られない。
佳子:昔は怖い映画や乗り物が好きだったけれど、子どもを産んでから苦手になり、家に貼ってあるポスターも裏返しにしてほしいって言うようになってしまいました。お化け屋敷は遊びの要素があるから楽しめるけれど、ポスターはこれでもかと迫ってくるから。
ブルース:自分の作品だけど。
佳子:今日はゆっくり見させてもらって良かったです。五味さんの一番落ち着く場所は、どこですか。
五味:自分の家が一番落ち着きます。でも僕、お化け屋敷の中も落ち着きますけどね。裏で、暗い中にいるのも落ち着きます。
閉所恐怖症と着ぐるみの恐怖
五味:あまり言いたくないですが、飛行機が苦手です。閉じ込められる感じが嫌なんですよ。
関:映画館の真ん中の席が嫌な友人がいて、リフトも嫌だと言っていました。
ブルース:僕も、真ん中の席は自由じゃないから好きじゃない。
関:学生時代、怪獣のぬいぐるみのバイトでチャックを締められて、自分で開けられなくてパニックになったことがあります。
五味:僕もドラム缶のふたが開かなくなる話をお化け屋敷で書いています。
関:以前に流行った「8番出口」も、帰れない設定が近いかもしれませんね。
五味:ゴジラの着ぐるみでプールに倒れる撮影では、なかなかカットがかからず、中に水が入ってくる現場があったと聞きました。
関:それは怖いですね。
今年のお化け屋敷は、横溝正史の世界観で
関:今年のお化け屋敷のテーマは何ですか。
五味:「暗闇婚礼」です。昭和20年代後半の村を舞台に、村の掟をお客さんが破ったために、恐ろしい目に遭う物語です。変な因習とかって、怖いですよね。
動画 40分22秒「『暗闇婚礼』」
動画 40分37秒「横溝正史の世界観」
関:横溝正史の「八つ墓村」のような世界ですね。
五味:「犬神家の一族」的なものをやりたかったんです。横溝正史は諏訪で療養か何かで過ごしていた時に、現地の片倉財閥と諏訪湖をモチーフに「犬神家の一族」を書いたと言われています。
神田伯山さんとの講談コラボレーション
五味:講談師の神田伯山さんと三遊亭遊雀師匠が新宿末廣亭で「お岩誕生」(四谷怪談)と「お札はがし」(牡丹燈籠)を交互に演じます。その怪談物の演出を、7月1日から10日までやらせていただきます。
関:佳子さんからの告知は?
動画 44分05秒「親子の日イベントのお知らせ」
佳子:7月第4日曜日の「親子の日」が近づいていて、写真コンテスト、エッセイコンテスト、親子大賞の投票、スーパーフォトセッションなどのイベントが予定されています。
関:詳細は親子の日のホームページをご覧ください。
動画 46分05秒「森戸神社での作品展示」
ブルース:もう1つ。葉山の森戸神社で、大きな作品と映像の展示を8月末まで行っています。
五味弘文の~Present to the Future~
動画 51分06秒「Present to the Future」
五味:僕のPresent to the Futureは「冒険を続けよう、ずっとずっと」です。冒険っていうと、冒険者だけがやるようなイメージがあるじゃないですか。そうじゃないと僕は思っていて。例えば僕は音楽が好きで、最初に買ったレコードはアイドルのCDシングル版。それが、やがてボブ・ディランにたどり着いたり、トーキング・ヘッズにたどり着いたりするわけですけれども。
当時は今と違って、情報が全然ないじゃないですか。お金もあまりないから、お小遣いを一生懸命ためてレコード屋に行って「これがいいかな、あれがいいかな」。いろいろな情報を友達から聞いたり、友達の所へ行ってレコードを聴いたり、雑誌を読んだりしながら、次のお小遣いで買うべきレコードは何かと一生懸命考えるわけです。
関:確かに。
五味:「こんなにお金払って、4人組のジャケットの。買って大丈夫?」って言って「ミート・ザ・ビートルズ」を買う。レコードに針を落として「わあ、いいな」と思う。それって、すごいリスクを負っているわけですよね。そこに至るまでに失敗したレコードもたくさんある。
お金を払ったのに全然面白くない。でも、ここにたどり着いた喜びがあるから、次はもうちょっと先へ行ってみよう。先へ行き、先へ行き、失敗し、リスクを負いながら、どこかの段階でボブ・ディランにたどり着き、どこかの段階でトーキング・ヘッズの「リメイン・イン・ライト」にたどり着く。
冒険心を持ってチャレンジして、リスクを負いながら何かを踏破していくことを繰り返して、そこにたどり着くわけじゃないですか。今の若い子たちの、例えば音楽の生き方ってそうじゃない。どんどん情報がきて、リスクを負わなくてもサブスクでいろいろな音楽が聴ける。でも、それはアルゴリズムの中で展開されているから、韓国アイドルの曲が好きだと、そのアルゴリズムではボブ・ディランにたどり着かないんですよね。だから、今の時代って冒険を奪われていると思っていて。
未来に伝えたいことは「冒険心を抱いて、とにかく冒険を続けよう」。リスクを負って、負って、へこたれて、失敗して。自分の手で何かをつかみ、それを足掛かりにして、また失敗しながら次の何かをつかんでいく。いつの間にか遠い所までたどり着いている。そういう生き方を、若い人たちはしてほしいな。
関:素晴らしい。皆さんも、レッツ冒険! どうもありがとうございました。

































