ようやく秋らしさを感じるようになったこの頃。

体調など崩されていないでしょうか?

食欲の秋でもあるこの週末、ぜひ家族で食卓を囲む機会を作ってみてはいかがでしょう。

例えば・・・「カレー」なんていいですよね。

今日お届けするエッセイは、そんな「カレー」と「週末」の記憶からうまれたお話をご紹介です。

「親子の日」エッセイコンテスト2018 入賞作品

 

「土曜日のサザエさん」

「あなたが生まれた日は、実家でカレーを食べながらサザエさんを見ていた。」
これは私が生まれてから今日に至るまでに何度か母から聞かされてきたエピソードだ。
なんの因果か私はカレーが大好きで、サザエさんを毎回録画してまで見る大人に育った。
母はこの話の続きを、いつもこんな風に締めくくる。
「だからあなたは間違いなく日曜日生まれなの。日曜日生まれの子は運がいいんだよ。」
この話のおかげもあり、私も自分の強運ぶりに自信を持って生きてきた。
受験のときも、就活のときも、この言葉はどこかで私を勇気づけていた。
ちなみに受験は落ちた。

 

しかしある日、暇を持て余してスマートフォンで自分の生まれた年のカレンダーを見ていたら、
驚くべき事実に気づいた。私の誕生日は土曜日だったのだ。
これでは受験の失敗も就活の連敗も仕方ない。
すぐさま母に、真実を隠しつつ生まれた日のことを訪ねた。
するとやはり、「カレーを食べて、サザエさんを見ていた」と言う。
カレーはともかく、サザエさんのように強烈な記憶を取り違えることがあるだろうか。

 

もちろん昔サザエさんが火曜日にもやっていたことは知っている。
しかし問題なのは「土曜日」なのだ。
録画の線も考えたが、あいにく私の親戚に録画してまで
サザエさんを観たがるサザエさんファンはいなかった。
こうなりゃ書類の書き間違いすら疑う始末である。
サザエさんが急に土曜日に放送されるよりは、
多忙なお医者さんが日にちを書き間違える方が有り得るだろう。
それともあのサザエさんは母が陣痛にうなされて見た走馬灯だとでも言うのだろうか。

 

これまでの二十年あまり私を勇気づけたこのエピソードは、今後、隙をついては私の頭を悩ませる、
なんとも言えない話題になるだろう。
こんなことを考えて悶々としていると、取るものも手につかない。
とりあえず、今日の夕飯はカレーにしようと思う。

女性 23 京都市

 

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