「親子の日」のエッセイコンテストには、今年もたくさんのエッセイが集まりました。入選に及ばなかった方も含めて、貴重な経験や思いを書き綴って応募して下さったみなさまには本当に感謝です。

 

既にHPでは発表した作品ですが、入選したエッセイをあらためてコラムで紹介していこうと思います。

 

ファーストバッターは、グランプリ受賞の作品から!

 

タイトル:「もっと違うママが良かった!」  

原田恵李  28

いつも仕事で家にいない、母が嫌いだった。

帰ってきたかと思うと台所の流しに向かい、私に背を向ける。

不満が募っていた中学のころ。学校で嫌なことがありムシャクシャしていたある日、ついカッとなり母に向かって叫んだ。

「お母さんが選べたら良かったのに!もっと違うママが良かった!」

母を酷く傷つけたことに、すぐ気づいた。私は恐る恐る母を見た。母は何も言わず、台所を後にした。私は母の後を追った。

「いつも話聞いてくれんし、私の事なんか嫌いなくせに」

洗面所に座っていた母に吐き捨てた。本当は母の様子が気になったから追いかけたなんて伝える素直さは当時の私にはなかった。ましてや、謝るなんてできなかった。

高校卒業後、私は海外の大学に入学した。

気づいたらいつも母にテレビ電話をしていた。海外に居ても、事がうまくいかなかった時、テレビ電話ごしで母に八つ当たりした。逆に嬉しいニュースも母にはいつも一番に知らせたかった。

海外から帰る度、母は聞く。

「何が食べたい?お寿司?」

「ママのごはんなら何でも。」

私の答えはいつも同じ。私が喜んでいると一緒に喜び、怒りは受け止め、どんな時も心に寄り添ってくれる。

そんな母が大好きだった。

母はいつも台所で私に背を向けていた。

でも母は私の事が嫌いなんかじゃなかった。仕事でどれだけ忙しくても、必ずごはんを作ってくれた。母のごはんはいつも温かかった。もう直ぐママになる私は母と一緒に台所に立ち、母から料理を教わっている。そして、あの時こんなひどい事言ったよね、と会話する。

今の私は、素直に言える。

あのころは、ごめん。

ママがママで良かった。

ほんまに良かった。

 

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