先週に続き、今年の「親子の日エッセーコンテスト」の入選者のエッセーを紹介します。年末の慌ただしい日常をほんのり包み込んでくれそうなストーリーです。楽しんで下さい。

 

「七色のアイスクリーム」     

今田尚輝        44歳

クマのぬいぐるみが飛んできて、僕の顔面に直撃した。投げたのは三歳年下の妹だ。このとき小学一年生だった僕は、負けじとそれを投げ返し、大ゲンカとなった。

原因はアイスクリームだ。チョコとバニラのどちらが美味しいかでケンカになった。

「私はイチゴ味が好きだな」とママが言うと、「俺はメロン味が好きだ」とパパ。「わしは何と言ってもあずきだ」とおじいちゃん。「私は抹茶味が好きですよ」とおばあちゃんが言った。するとだんだん皆ムキになりだした。

「イチゴが一番美味しい!」「いや、メロンだ!」「あずきだろう」「抹茶ですよ」と、果てしない論争になろうかというそのときである。「もう! みんなやめなしゃい!」と仲裁に入ったのは、なんと妹。

「アイスクリームのことでケンカなんかしないの!」

途端に全員大爆笑。なぜみんなが笑っているのかをわかっていないのは妹だけだったが、つられて妹も笑い出した。

翌日、父がアイスクリームを買って帰ってきた。家族それぞれが好きな味のアイスクリームをひとつずつである。家族皆で食べるアイスクリーム。自然と皆に笑みがこぼれる。僕と妹は、みんなから少しずつ分けてもらって食べてみた。パパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃん、妹、そして僕。「六色アイスクリームだ!」と僕が喜んでいると、母が言った。

「来年は七色になるかもね」このとき、母のお腹には新たな命が宿っていたのである。「きっとチョコが好きになるよ!」と言ったら、「バニラだよ」「イチゴでしょ」「メロンだ」「あずき」「抹茶ですよ」と、また始まり、最後には皆で大笑いになった。

きっとお腹の赤ちゃんも、楽しくて笑っていたに違いない。

家族って、最高だ。

 

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