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第30回オンライン・トークライブ「未来への贈り物 ~Present to the Future~」
出演:永井巧氏(一般社団法人そっか代表理事)
司会:関 智(編集者、プロデューサー)
ホスト:ブルース・オズボーン(写真家)、井上佳子(親子の日普及推進委員会)
主催:親子の日普及推進委員会
配信日時:2025年1月19日(日)13:00~(LIVE配信)
第30回目のオンライン・トークライブのゲストは、永井巧さんです。
*本記事では、動画のハイライトをご紹介します。
<動画はこちら>
出演:
永井 巧(一般社団法人そっか代表理事)
幼少期に溺れかけた経験で大の水嫌いとなったが、高校時代に体験した遠泳がきっかけとなり海に魅了される。大学卒業後はツアモツ諸島の黒真珠養殖場で働く。逗子海岸で「黒門とびうおクラブ」の活動を開始したのが2010年。2016年、友人とともに「一般社団法人そっか」を設立。未就学児から大人まで海山などでの遊び、アウトドアスポーツのコミュニティを運営している。
関 智(編集者、プロデューサー)
「POPEYE」「BRUTUS」「宝島」など、カルチャー雑誌の企画・編集に参加。現在は、日本工学院などの非常勤講師、刺激スイッチ研究所所長も務める。「親子の日」公式サイトの「せきさとるのムービー親子丼」を担当。
ブルース・オズボーン(写真家「親子の日」オリジネーター)
1982年から親子をテーマに写真撮影を開始。2003年より7月の第4日曜日を「親子の日」と提唱。「親子の日」などの写真を通じての社会活動が認められ東久邇宮文化褒賞を受賞。作家として「未来への贈り物~Present to the Future~」というメッセージの発信を続けている。
井上佳子(親子の日代表 プロデューサー、株式会社オゾン代表取締役)
ブルース・オズボーンの仕事とプライベートのパートナーとして数多くの展覧会やイベントをプロデュース。
関:皆さんこんにちは。年明け、1回目のオンライントークライブです。早いもので今回で第30回! ゲストに永井巧さんをお招きました。よろしくお願いします。
永井:よろしくお願いします。
永井巧さんご紹介
関:これまでの活動をお聞かせいただけますか。
永井:私は神奈川県の逗子に住んでいて、逗子で「一般社団法人そっか」という放課後の自然学校と保育園を運営しています。自然とのつながりをベースに海、山、川で子どもたちが思いきり楽しめる場所です。ウェブサイトを今、映していただいていますね。
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関:「そっか」では具体的にどんな活動をしてますか。
永井:活動は、子どもと保護者が一緒に自然に触れながら楽しむことを大事にしています。放課後、海に集合して、海に入れる季節はどっぷり海に入って。海に入れない季節は山に行ったり、ファーストエイドを学んだり、地形図を持って探検に行ったり。
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子どもが生まれた頃、私はオーストラリアでライフセービングを学んだり、ハワイでワイドカヌーの大会を目指していました。現地では子ども向けのプログラムがたくさんあったのです。それで、家族で暮らし始めた逗子で、似たような場を作ろうと思ったのです。
関:素晴らしいですね。ずっと、終わらない夏休みじゃないですか。
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永井:そんな感じです。今出ている写真は逗子海岸ですが、西側に富士山が見えて夕焼けの時間がとても気持ちいいんです。砂浜に来れば仲間がいて、子どもたちだけで自由に遊べる。そういうことが大事だと思っています。だから、クラブでは、学校の休み時間でやるような遊びもやっています。
関:今、子どもたちは遊び場が少ないです。学校でも遊べないし、道草も食っちゃいけないみたいなね。昔のように、子どもが自由に自分の思いを出せる所がないので、この活動は非常に貴重ですね。誰でも参加できるんですか?
永井:登録制です。説明会に参加して、入会したメンバーが参加できます。ただ、浜って誰のものでもないし、オープンなんですよ。だから、学校の友達も一緒にサッカーをしている、なんて時もあります。昔はこういうことは勝手にできましたよね。そういうことが当たり前にできる世の中にしていくことも、大事じゃないかと思っています。
佳子:子どもたちがのびのびと好きな事ができて、それを一緒にできる大人たちが周りにいるのが、とても素敵だと思う。それが「とびうおクラブ」や「そっか」の使命かなって。子どもが中心でいながら、皆が楽しめるのが素敵だと思うので。どんどん広げていってほしいなと思います。
ブルース:皆がストレートに話していて、コミュニケーションがすごくいい。子どもと大人が対等に話をしている。海の事も楽しく体験して。そんなふうに育っている子どもたちは、すごくラッキーだと思います。
海が嫌いだった子ども時代
関:昔は海が嫌いだったと聞きました。本当ですか?
永井:小学校に上がる前は、ブラジルのリオデジャネイロに住んでいたんです。そこで海に行きまして。初めての海で、ドーッと突っ込んで行ったら波に巻かれてしまったのです。
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関:これが、ブラジルの海ですね。
永井:しかも、同じ日に2回溺れまして。海から上がった後でプールへ行ったんです。でも怖いから水に入らずに船のおもちゃを浮かべて遊んでいたのです。そうしたら、おもちゃが手から離れて、手を伸ばした時に頭から落ちてしまいました。非常にトラウマになりまして。その後、海どころか家のお風呂もダメな、大の水嫌いになりました。
嫌いだった海が、素晴らしいものに変わる
関:それが、何でひっくり返ったんですか。
永井:16歳の高校生だった頃の夏に、千葉の海で臨海学校がありまして。1週間毎日遠泳したり、岩場から飛び込みをしたり、当時の私にとってはかなり嫌なものでした。でも避けては通れないので、そんな素振りは見せずに頑張りました。前半は、本当に逃げ出したかったです。ところが、海の沖合で嫌な気持ちが抜けて、ふと全てを受け入れられる気持ちになったのです。海があって仲間がいて、ここまで来られた。海はすごく気持ちいい。全身で腑に落ちたような感覚の瞬間があって。それで、全てが変わりました。
関:悟りの境地があったのですね。
永井:そうですね。その体験は今も生きていると思います。
関:溺れたことが、多分すごく大事だったんですね。それがあったから、人生が変わったとも言える。
永井:おっしゃる通りです。強烈な経験によって、マイナスがマイナスに掛かってプラスになった。
関:掛け算が起きたのですね。
海とともに歩み始める
永井:いろいろな形で、常に海に関わっています。大学時代はライフセービング、サーフィン、カヌーなど、いろいろなマリンアクティビティーやマリンスポーツを。仕事も黒真珠の養殖やサーファー向けの気象予報会社、波情報ですとか。あとは、アウトドアスポーツウェアの会社や、サーフボードを扱う店など。
ブルース&佳子さんとのつながり
関:佳子さんにとって、永井さんはどんな人ですか。
佳子:私の中で「この人が私のことを好きでいてくれたら、私は大丈夫」と思う人が何人かいるのですが、永井さんはその大事な人たちの1人です。
ビーチを散歩していると、沖のほうから「佳子さーん」って呼んでくれるんですよ。すごく遠くからですよ、それも1回じゃないんです。地元にいるって感じで、すごくうれしいです。今日も私たちのトークライブに出てくれて、もう幸せです。
関:ブルースにとって、永井さんはどんな人ですか。
ブルース:永井君は海が大好き。ナレッジとラブ、サーフィンだけじゃなく、全てにリスペクトしてます。
永井:お二人がいつも仲良く波打ち際を歩いているので、海の中から見つけるとうれしくて、声を掛けてしまったのですけれども。お二人が海に流れ着いたいろいろな物、昔のおもちゃや貝など、いろいろな物を拾って、一つ一つに愛情や面白さを見いだしていく姿に感動しています。いい刺激を頂きました。
ブルース:拾った物をクッキージャーに入れて。
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関:それをアートに昇華して、少し前に作品が帝国ホテルに展示されたことがありましたね。葉山のゴミが東京の玄関口を飾ったって、すごくないですか。非常に痛快だと思います。環境破壊や地球汚染など、いろいろありますが。こういうハッピーな形で警告を出せるのがいいですよね。説教くさくなくて。
ブルースの「干支展」開催
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関:佳子さんたちは、新年恒例の催しとして、日本外国特派員協会(FCCJ)で1月いっぱい「干支展」というのを開催しています。写真を見せてもらいましょう。どんな人が参加しているのですか?
佳子:渦巻きの左から三つ目はミック・ハガーティーさん、割と皆さん知っているような作品を発表している人ですけれども。その隣は大西重成さん、北海道のシゲチャンランドっていう所の人とか。全部、蛇なのですけれども、いろいろな思いを込めて、新年の作品を作ってくれています。FCCJ(外国特派協会)で1月いっぱい開催しているので、ぜひ見てください。
ブルース:日曜日と祝日を除いて、無料で入れます。子どもも入れますよ。ぜひ来てください。
※干支展:https://www.fccj.or.jp/exhibition/january-2025-exhibition
永井さんファミリー紹介
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関:ブルースが撮った、永井さんの親子写真を見てみましょう。これは何年前ですか?
永井:今この子が15歳で、この時が多分3、4歳。ですから10年以上前です。
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永井:これは逗子海岸で撮っていただいた写真です。
ブルース:永井君は、家族のムードメーカー。
永井:長男は走ることが大好きで、次男は釣りと海が大好きな子です。妻の祖父は、オリンピックのマラソンランナーでした。歴史的な文脈でよく取り上げられる方なのですけれども、ヒトラーが開いたベルリンオリンピックに出場していて。日本名では孫基偵(そん きてい)、朝鮮名、韓国名ではソン・ギジョンという名前です。「ボストン1947」(カン・ジェギュ監督)という映画で取り上げられています。
関:「シュリ」の監督の新作ですね。韓国映画も面白いですよね。
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普通に暮らしても、自然環境にダメージを与えない社会をデザインしたい
関:永井さん、今の大人については、どう思われますか。
永井:そうですね、私もいい年ですけれども。今の世の中、普通の暮らしを真面目にしていても、自然環境にダメージを与えてしまうのです。誰がいい、悪いではなくて。だから、誰もが普通に暮らして、自然環境にダメージを与えない社会をデザインしたいなと思いますね。今は環境に良いことをしようと思うと、無理をしなければいけないのが残念だと思っています。
関:今までの大人たちは、無責任だったなと思うのですよ。環境とか、いろいろな大事なことを考えないできたような気がするんです。
佳子:もっと自然に感謝する姿勢を持つとか、大人が変わらないとね。それを体現している永井さんの活動は素晴らしいですね。
講演会『沿岸域の生態系~逗子海岸の保全のために』開催のお知らせ
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関:ところで永井さん、お知らせがあるそうですね。
永井:2月15日に、逗子市役所で海と環境に関わる講演会『沿岸域の生態系~逗子海岸の保全のために』を開催します。九州大学大学院準教授の清野聡子先生を講師にお呼びして、海の生態系をテーマにお話を伺います。
関:どんな話が聞けるのですか。
永井:逗子の生態系について、ちょっとした事で生態系が変わるというお話や、その中で自分たちができる事についてヒントを頂けます。例えば海岸の砂の流出対策は、通常パワーショベルなどで砂を運びます。でも、例えば草を茂らせると砂のよりどころになって、根元に砂が堆積するのです。そうやって植生を豊かにして砂浜を守る方法だとか。自然の力を生かして課題を解決する、ちょっとした工夫を紹介する内容です。
関:先ほど言った、大人が変わるヒントがたくさんあるのですね。ぜひ皆さん、お越しください。
※【問い合わせ】逗子観光協会 Tel:046-873-1111 参加無料
永井巧の~Present to the Future~
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では、恒例の「未来への贈り物~Present to the Future~」永井さんの贈り物は何でしょうか。
永井:誰もが普通に暮らしていても、海や街、鳥や花。そういったものが豊かに美しくなる世界を作っていきましょう。特別頑張るとか、無理するとか、大変なお金を掛ける形ではなく、普通に皆が暮らして環境が破壊されないのが当たり前の社会です。
関:まさにサステナブル。継続しなければいけないですものね。では、最後に永井さんの活動をまとめたビデオ「By the Sea」を見ながらお別れしましょう。
永井:私たちは地域の自然で遊ぶことをベースにしていますが、アウトドアスポーツを楽しむだけではなく、地域の自然と関わって守っていきたいと思っていろいろと活動しています。その一環で、養殖ワカメの漁師さんとの活動を紹介する動画を、二宮在住のBen Matsunagaさんという方に制作していただきました。
関:今日はどうもありがとうございました。ビデオ見てね!
<ビデオ上映>
By the Sea:https://www.youtube.com/watch?v=zNhHTnkQkq0