全編すべてPC画面で表現される「search」は、そのトリッキーな取り組みも楽しいが、それ以上に謎解きの見事さやドラマの完成度の高さで観客の目を釘付けにする。
カメラを使わず、全編すべてPC画面のみでつくられた映画————
その話を聞いた時、一体果たしてそんなことが可能なのだろうかと、興味津々で鑑賞に臨んだが、
あっという間に話に巻き込まれてしまった。
話が圧倒的に面白いのだ。たんなる実験的な試みではない、その高いドラマ性に引き込まれた。
たしかに現代はPC画面上で多様なことを行なっている時代だ。
だから、その画面に映っている要素だけで物語を構成することが可能なのだ。
例えばPCに残されている過去の映像たち。
FaceTimeで通話すれば相手の顔と自分の顔がリアルタイムで表示されている。
またリアルタイムな会話ならメッセンジャーで表示できる。
SMSではリアルタイムの会話が表示される。
そしてFacebookで相手の友人関係を盗みすることもできる。
FaceTime、Facebook、Gmail、Twitter、Instagram、TumblrこのようなSNSを
マルチ画面で見せながら展開させていく。
つまり本作は、現代人が日常的に使っているガジェット空間を映画空間に反映させて、
その日常性の中から事件の真相を浮かび上がらせていく緊迫感を描いていくサスペンスだ。
物語は、ある日突然姿を消した高校生の娘を父親が必死に探し出そうとするところから始まる。
警察と協力しながらも、父親は娘の昨日までの手がかりをたぐりよせて娘の行動をさぐっていく。
娘のPCを開きFacebookの投稿を調べてみたり、Twitterでの会話記録を調べたり。
通常ならNGな行為なのだが、失踪した娘を探し出したいという、
父親の真摯な行動はモラルの壁を破って、観客の同情をひきだしていく。
高校生という難しい年頃、そしてけっして円満とは言えなかった2人の現状。
そしてだんだんと父親の知らなかった彼女の実像が垣間見えてくる。
子供をもつ親なら誰でも経験するであろう、子供との意思の疎通の難しさなどが
大事な要素としてミステリとしてドラマに絡んでくる。
また、これが上手いところだが、過去の2人仲良くて、可愛かった子供時代の映像も
PCに残っているので、父親はそれを再生する。
取り返すことのできない時間を。つまり過去、現在と時間を飛び越えて関係性が強調されるのだ。
ストーリー展開は、伏線の回収の連続と犯人解明までの展開も秀逸なのだが、
親子関係の修復というサブ・プロットまでみごとに決着つける手腕の唸らされた。
ネタバレで書けない事がそうとう多いですが、新鮮でみごとな語り口であることは間違いない。
ミステリと親子映画を両立させた、創作の意欲あふれる秀作です。
関智