私が死んだら、大好きな海に散骨してほしい。でも、 海を汚すことになるかもなぁと、思いあぐねていた ときに、宇宙葬を知った。  夜空に輝く星になるなんてロマンがある。宇宙に しよう。「私、お母さん星になるわ。寂しいときは空 を見上げて、一番輝いている星が私だと思ってね」 と一人盛り上がっていると、娘たちにスルーされた。  宇宙葬には、大気圏突入後、流れ星になって燃え 尽きる宇宙プランと、宇宙空間に到達後、200年 以上軌道周回する人工衛星プランがあり、遺族はア プリで遺灰カプセルがどこにいるかを確かめ、祈る のだという。値段はお問い合わせください。あ〜、 だんだん夢がなくなってきた。  7月20日、アマゾンの創業者ベゾス氏が約10分間 の宇宙旅行から無事帰還。氏が有する宇宙開発企業 の企画で、搭乗権が30億円で落札されたことも話題 になった。もっと社会に役立つ使い方をと言いたく なるのもわかる。だが、その宇宙ビジネスとやら、 夢やロマンだけではなさそうだ。すでに市場は40兆 円にも達し、2040年には100兆円規模に成長 するという。人工衛星やロケット、旅行やエンター テインメントなど事業は多岐にわたるが、参画企業 が目指しているのは通信や地球観測など衛星データ ビジネスだ。世界にはインターネット未活用の人間 が40億人も存在するそうで、商機はそこにある。  「宇宙から地球を見ると本当に美しい。かけがえの ないふるさとである地球を守っていく。地球への思 いやりを忘れずに仕事をしていきたい」そう語った のは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)特別参与・ 宇宙飛行士の若田光一さん。  世界の富豪たちは宇宙から地球を見て、母なるふ るさとを美しくするビジネスを考えないのだろうか。 10年以上前に、漫画家の松本零士さんと対談した ことを思い出した。ご自宅を訪れ、夜10時から延々 6時間、少年のように夢や宇宙を語る姿に感動した。  対談の最後に「『銀河鉄道999』の乗車券が欲し いのですが、どうしたら手に入れられますか?」と 尋ねると、こう返された。「夢をなくさず、未来に向 かって一生懸命に生きること。そうすれば必ずあな たの目の前に列車が停まり、さぁ、お乗りなさいと、 招き入れてくれるでしょう」。  宇宙葬も、海洋葬も、もうどうでもよくなった。 最後の日まで、お母さんを笑顔にする夢を生きよう。 遺灰? なんなら、その辺の畑にでもまいてくれたら 美味しい野菜になるかもよ。「いや、アクが強くて 不味いでしょ」と娘たち。

(藤本裕子)

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